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【実施報告】令和7年度小企業者組織化特別講習会を開催しました

大阪府中小企業団体中央会では、去る9月25日(木)、マイドームおおさかにて、小企業者組織化特別講習会「トランプ関税の影響と支援施策~米国通商政策の中小企業への影響と商工中金の支援策~」を開催しました。講師には、株式会社商工組合中央金庫マーケティング部の柊木智氏をお迎えし、最新の経済・金融情勢とトランプ政権による関税政策が日本経済に及ぼす影響、そして中小企業・小規模事業者が取るべき今後の対応について解説いただきました。

まず講演の前半では、世界・日本経済の現状と先行き見通しについて説明がありました。IMFの見通しによると、2025年の世界実質成長率は3.0%と堅調な一方、物価上昇や地政学的リスクなど不確実性が残ると指摘されました。日本経済は緩やかな回復基調にあるものの、物価高により実質消費が抑制されており、企業収益や投資意欲にも地域差が見られるとの分析が示されました。続いて、米国トランプ政権の関税政策の経緯と影響について解説されました。2025年初頭以降、鉄鋼や自動車などへの追加関税が段階的に拡大し、日本企業の対米輸出金額は減少。7月の日米協議で関税率は15%に引き下げられたものの、依然として実体経済への影響が大きいと説明されました。商工会議所のアンケートでは「受注減少」「調達難」などが多く、特に製造業で懸念が強いことが分かりました。商工中金の取引先企業の事例紹介では、出荷前倒しや原産地変更など、各社が柔軟な対応を図っていることが紹介されました。講師は、こうした不確実な環境下では政府による資金繰り支援策や金融機関の伴走支援が不可欠であるとの見解を示しました。

後半では、「人手不足」と「生産性向上」を中小企業の構造的課題として取り上げました。商工中金の調査結果をもとに、今後の中小企業経営には「投資による労働代替」と「優れた人材の確保・育成」の両立が重要であると述べ、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)や人的資本経営の推進が企業価値向上の鍵になると説明されました。また、経営者が明確なビジョンを示し、従業員の意識向上を図ることの意義が強調されました。講演の締めくくりとして、商工中金が展開する「幸せデザインサーベイ」や「ヒューマンデザイン」との連携による新たな人材育成支援サービスが紹介され、人材と組織文化の両面から中小企業を支援する取り組みが紹介されました。 本セミナーを通じて、国際情勢が大きく変動する中において、中小企業・小規模事業者の経営リスクの認識を深めるとともに、今後の経営戦略を考える上での多くの示唆を得ることができました。

講義の様子

本セミナーに関する質問に対する講師からの回答

質問1.鉄鋼業界ですが、一律的に50%関税となっておりますが、今後変更可能性はありますか?或いは個人的な意見でも構いませんが、変更可能性は何パーセント考えられているのでしょうか。

講師の答え:結論、「わかりません」という回答になってしまうのですが、あくまで個人的見解ですが、短期的な景気動向によっては可能性はあると思います。トランプ大統領像として、MAGA(米国第一主義)こそが政治的イデオロギーであり、関税政策による企業や国民経済への悪影響が支持率に及ぶことがあれば、表面的には強硬姿勢を保ちつつも、実質的には柔軟な対応をするような印象です。

質問2.大阪府下は他府県と比べてトランプ関税の影響は大きいのか。

講師の答え:他府県に比べ小さいと思います。大阪府は全国比で輸出先に占める米国のシェアが小さく(全国20%に対し16%)、また米国向け輸出品目でも一般機械や化学製品の割合が大きく、自動車等の割合が小さいことから、関税に与える影響は比較的小さいと考えられます。ただ、大阪府は他県比で鉄鋼・金属系の産業割合が比較的大きいことから、米国鉄鋼関税の影響(直接的影響というよりは、関税政策にともなうグローバル・サプライチェーンへの間接的な影響)には注視が必要かと存じます。

質問3.(中小企業の景況について)トランプ関税の影響よりもコロナ禍以降立ち直れていない問題の方が大きいイメージがあるかどうか。

講師の答え:個人的見解ですが、中小企業全体としてはコロナの影響は一服したのかな、という見方をしております。日銀短観でも中小企業の業況判断はコロナ禍からもどり「良い」超となっており、コロナ関連倒産も足元では低位となっていることから、(どこまでをコロナ影響とするのかは議論あるところだとは思いますが)全体としては影響一服、という見方です。ただ、コロナ関連借入の返済は全体としては進んでいるものの、借入残高が相応に残っている先もそれなりにあり、また飲食業などを中心に赤字企業の割合が高止まりしている業種もあります。そういった企業群において、コロナ時の悪影響に加え、近時のインフレ、金利上昇、トランプ関税の影響などが後押しになって景況感を悪化させている企業もあるのかな、と存じます。

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